「輸送費が必要」と100万円請求、最高1億円超の被害も…国際ロマンス詐欺相次ぐ
2023/12/08 17:00
snsで知り合った外国人を装った犯人による国際ロマンス詐欺など、高額の詐欺事件が奈良県内で相次いでいる。リアルな人物設定や巧みなやり取りで相手を信じ込ませるのが特徴で、1~10月末の被害額は6億円を超え、従来の特殊詐欺の被害額を上回っている。「実態を知ってほしい」と取材に応じた県内の被害者が手口や教訓を語った。(山田珠琳)
「一緒に暮らすためにお金が必要だと納得してしまった」。離婚し、小学生の子どもがいる、奈良県生駒市の40歳代女性は7~8月、インスタグラムで、東京に住む会社員の米国人を名乗る男と知り合った。
男は43歳で6歳の娘がいると説明。子どもや犬などの話題で盛り上がり、line(ライン)で連絡を取り合うようになった。「私に共感してくれて、『好きだよ』と毎日伝えられた。『一緒に暮らそう』『結婚しよう』とも言われ、子どもにきょうだいができるって、いいなと思った」
男はその後、結婚には資金が必要だと言い始め、先物取引の投資に勧誘。女性は紹介された投資サイトを利用し、計650万円を指定口座に送金した。同サイト上では入金額がドルに換算され、一定の利益を上げているように見えた。
知り合ってから1か月後、友人に「再婚するかも」と男の話を打ち明けると「詐欺じゃないか」と疑われた。納得できなかったが、男や娘の写真はインターネットで検索すると全くの別人だと判明。翌日、警察に相談したが、送金した全額が戻ってこなかった。
女性は「何度も『うそをつくのはやめてね』と伝えたのに男は平気でだまし続けていた。今思えば、会う機会はなかったし、本当に無知だった。周りが見えなくなっていた」と嘆いた。
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奈良県田原本町の60歳代男性はフェイスブックの投稿に「いいね」を付けた米国人を装った女と11月、連絡をとるようになった。
44歳だという女は9歳の娘を母国に残してイエメンの戦地で軍医をしていると告げ、「危険な所から逃げ出したい」と伝えてきた。
男性が家族の写真を送ると、女からも家族だとする写真が届き、男性を「私の 素敵すてき な友人」と呼んだ。毎日20回以上のメッセージをやり取りし、男性は次第に父親のような感情を抱くようになった。「助けてあげたいと思った」
女は100ドル紙幣を詰めたケースの写真を送り「日本に行けることになった。あなたに送りたい」などと伝え、男性は住所や連絡先を伝えて荷物を受け取れるように手配。すると今度は「輸送費が必要だ」と言われ、届いた輸送会社を名乗るメールで、運賃として約100万円を請求された。
女は男性に「家族に秘密にしてほしい」と念を押していたが、男性はこの時点で知人や警察に相談。「99%、国際ロマンス詐欺」と言われた。現金は払わなかったが「ロマンス詐欺だと思わなかった。最初に疑わなかったのが情けない」と肩をすぼめた。
◆ 国際ロマンス詐欺= 外国人や海外移住者を装ってsnsなどで被害者と接触し、恋愛感情や親近感を抱かせた後、現金などをだまし取る。知り合ってすぐに金銭要求をせず、親交を深める期間があるのが特徴。10月末までの今年の奈良県内最高被害額は1億1100万円。
「お金の話、疑って」
奈良県警は国際ロマンスや投資名目の詐欺が増えているとみて、各署で実態を調べた。この結果、1~10月に42件の発生があり、被害額は6億1422万円に上ることが判明。同期間に確認された特殊詐欺185件の被害額5億628万円を上回っている。
東洋大の桐生正幸教授(犯罪心理学)はsnsでの詐欺被害が相次ぐ背景について、「コロナ禍が落ち着き、新しい出会いを求める人が多く、狙われる人も増えている」と指摘。「犯人は言葉巧みに寄り添い、狙った人の心に付け入ろうとする。冷静に見極めてほしい」と警鐘を鳴らす。
県警の梶祐吾・犯罪抑止対策室長は「snsを通じて知り合った人から、お金の話が出たらまずは疑い、周りの人や警察に相談してほしい」と呼びかけている。
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